浅野公喜

侵入者の浅野公喜のレビュー・感想・評価

侵入者(1962年製作の映画)
4.0
アメリカ南部の町にやってきた青年が人種差別を扇動するB級映画の帝王ロジャー・コーマン御大が監督を務めた社会派ドラマ。コーマン御大の長いキャリアの中でも特に力を入れ脅迫の電話や手紙が来る中命がけで作ったのに興行的には失敗した作品だとか。

ウィリアム・シャトナー演じる青年の精悍な顔つきと巧みな話術は多くの白人を惹きつけ、その演説は迫力満点。それに扇動された白人の大群が黒人の家族が乗る車を取り囲んだり疑うことなく黒人の少年を弾圧する様も恐ろしく、思考力を失う集団心理を巧みに描き現地のエキストラも多数起用した故の野暮ったくもリアルな白人達のビジュアルも強烈でした。

黒人をブランコに縛り付けて揺らす拷問(?)は映像としてはそこまで映えませんし、エンディングもあっさりしていますがまだ人種差別が根強い南部でピリピリとした緊張感の中ロケを行い今作を世に送り出したコーマン御大とスタッフキャスト達の行動力や勇気を称えてこの点数とさせていただきます。
浅野公喜

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