シズヲ

フロンティア・マーシャルのシズヲのレビュー・感想・評価

フロンティア・マーシャル(1939年製作の映画)
3.7
後に『荒野の決闘』でも変奏されるワイアット・アープ伝記。尺が70分前後なので実にコンパクトな内容、ドラマも舞台も緩くこじんまりと収まってる。敵対者であるクラントン一家なんかは全く掘り下げられないので最早潔い。開幕から2分でトゥームストーンの開拓と発展が爆速で描かれるのも印象的で、その過程で幾度となく挟まれる銃撃戦の描写が“無法と隣り合わせの時代”の象徴めいてる。

若々しいランドルフ・スコット演じるアープの佇まいはカッコいいけど、真の主役は明らかにドク・ホリデイ。彼との出会いによってドラマが駆動し、ドクを巡る三角関係が映画の中核を形成する。映画の余韻もドクによって齎されるんだよな。アープは心身共に病んだドクを“再生”へと導く存在として奥ゆかしい立ち位置に徹している。全体的には緩やかに進むきらいは否めないものの、駅馬車での逃走劇や芸人のシーンなど要所要所で印象に残る場面が登場する。“ドクの更生”と“三角関係の決着”を収束させる終盤の手術シーンは特に好き(ここが感動的なだけに直後のインパクトが強い)。普段は酒場に溜まってる荒くれ共であろうと子供が死にかければ全員で容態を見守るのもさりげなく印象的。

終盤の“OK牧場の決闘”もこじんまりと纏まっているが、闇夜の中での淡々とした銃撃戦も却って無骨で良い。OK牧場はまぁ正確には牧場じゃなくて囲い込み場なのでめちゃめちゃ近場でも不思議ではないのかもしれないけど、せめてもうちょっとアープを歩かせてやってもよかった気はする。『OK牧場の決斗』での4人横並びウォーク、改めて偉大な絵面だった。そして改心した悪女が墓場を見つめて去っていくラストシーン、中々どうして味わい深いものがある。こちらだと町を出るのは“クレメンタイン”ではないのだなあ。
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