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海がきこえるのmarimoのレビュー・感想・評価

海がきこえる(1993年製作の映画)
4.4
いやいやエモいね
なんだこれ、めちゃくちゃ面白いじゃん

男性向けの”おもひでぽろぽろ”みたいな感じ
設定は大学生なんで、もう世代的には全然違うんですけどね

この淡い高校生の恋愛
すごく好きです

「高知・夏・17歳 僕と里伽子のプロローグ。」
あっ、これ当時のキャッチコピーだそうです

キャッチコピーに“プロローグ”って…なんか時代を感じて良いぞ

劇中に出てくるトラベラーズチェックとか、俺世代でも知らないのよ(親から微かに聞いた記憶…)

これが時代性ってやつです

公開当時はまだまだ小僧だったので
だいぶ大人なアニメという印象でした
結果、今この歳になるまで全くのスルーです

もっと早く観ておけば良かった
…大田区・夏・19歳 の時にでも観てれば、同窓会で何かのプロローグになっていたかも
…川崎・夏・23歳 の時にでも観てれば一人暮らしを始めたあの日になにかのプロローグになっていたかも

まあ実際は
川崎・夏・38歳 でのんびりジブリマラソン中に観たので正直なんのプロローグにもならないわけですが
(ってかどれだけ川崎に住んでるんだか…)

内容は至って普通の高校時代を思い出す系の映画ではあるのですが
携帯電話が無い高校生活というのが私世代でも知らない時代で
連絡手段が電話だけなので人と人が実際の距離の分だけ離れているのがダイレクトに伝わる時代だったり

これらの時代性が平凡なストーリーをよりドラマチックに引き上げている
この距離感が実感できない今観てこそ、この作品の密度がより濃くなっているように思える

さらにドラマを盛り上げるシチュエーションもとにかく良く

高校2年生で東京から高知に転校してきた美人な女の子…エモい
親友が前のめりなのに自分は冷静を装う感じ…エモい
ハワイの修学旅行での縮まっては離れる距離感…エモい
2人きりの東京旅行…エモい
2人きりのホテルの夜…エモい
人間関係が崩れた文化祭…エモい

エモさが強烈な勢いで渋滞して溜めるだけ溜めての同窓会の帰省での全力解放です

親友との仲直り
少し成長した同級生の姿
ひと気のない深夜の商店街
ライトアップされた地元の象徴

エモの解放が止まりません

トドメのエモは吉祥寺で解放して…はい、完璧な展開
ちょっと、吉祥寺行きたくなるな
(全然縁はないですけど)

ノーマークからのまさかの傑作

えっ、しかもこれ劇場用ではなくスペシャル特番のテレビアニメなの?
ちょっとクオリティ高すぎでしょ…バブリーすぎるでしょ

この「海がきこえる」ってタイトル
最後まで”海”なんか出てきたっけ?
ハワイのとこ?
って色々めぐらせてたんですが

どうやら
上京して実家に電話をかけた時に受話器越しに聞こえる波の音に故郷を思い出す
そんな意味合いだそうです

もう、タイトルもエモいんだから
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