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海がきこえるの1のレビュー・感想・評価

海がきこえる(1993年製作の映画)
3.8
90年代の雰囲気をスクリーンいっぱいに感じる濃密な70分間

どこで切り取っても絵になる構図とレイアウト。そして随所に溢れるカット繋ぎでの静的な画の美しさ。流石ジブリの若手集団が作ったアニメ映画だと感心しっぱなしだった。

ストーリーは私が大好きな女性ならではの視点での青春群像劇。
男と女のすれ違いのもどかしさが絶妙なお互いのメタ視点での語りと共に展開されていて、全く不満感も心の中でのツッコミも無くスムーズに観れた。

また、90年代のアニメ映画ながら、ありがちなお色気に逃げるシーンがほとんど無く、
序盤においても、転校生の里伽子がテニスをするシーンを見る男子達が里伽子をエロい目で見るのではなく、かっこいい女性として羨望視する感じがすっごく良かった。
その後のシーンでの、拓が豊に対して恋愛的に嫉妬するのではなく里伽子よりも自分の方が良さを分かっているのに…という異性への嫉妬も友愛をベースにした愛憎劇になっていて、拓の良くも悪くも真っ直ぐで潔い性格にどんどんと惹き込まれていった。
里伽子の言動も理不尽さが終始あったが、複雑な家庭環境の中で育ち、慣れない環境で暮らす高校生の女の子という背景がしっかり示されていて、むしろ愛おしく感じる余白をしっかりと感じた。

この物語に出てくる全ての登場人物にちゃんと納得出来るストーリーでとても気持ちよく終始楽しむことができた。
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