ファスビンダー監督作品9作品目…。
監督自身が書いた同名戯曲を自らの手で映画化…。
オゾン監督の『苦い涙』は本作をリメイクしたもの…。
舞台になるのはブレーメンにあるアトリエ兼アパルトマンの一室…ワンシチュ作品です…。
2度の結婚に失敗したファッションデザイナーのペトラ(マルギット・カルステン)は助手のマルレーネ(イルム・ヘルマン)と共に暮らしていました…。
ペトラは高慢でマルレーネを召使のように扱いますが…お互いにサドマドヒズム的な共依存の関係…。
しかしペトラの友人が若くて美しい女性カーリン(ハンナ・シグラ)を連れて来たことで…3人の関係性が崩れていきます…。
地位も名誉もお金も持ちながら…ただひとつ手に入らない"愛"…孤独なペトラの叫びを膨大なセリフと共に苦しく、時にはユーモラスに描きます…。
結婚の失敗から男性を忌み嫌い、自由を求めたペトラ…しかし野心家の若いカーリンに惹かれますが…彼女を自分のものに出来ない飢餓感から妄執を重ねていきます…。
一方、一言も喋らないマルレーネ…クラシカルなヘアースタイルに地味な黒いドレス…彼女は全てを周知した上でただただタイプライターを叩きます…その音は孤独な彼女の叫び声のように痛く悲しく室内に響き渡ります…。
そしていつもながらの冴え渡るファスビンダーの美意識…クルクルと変わるペトラのオートクチュールのような衣装やウィッグ…何体ものマネキン、そして圧倒的なのが壁一面の巨大複製画…フランス古典主義の画家ニコラ・プッサンの『ミダス王とバッカス』…。
舞台劇のようなアプローチで重なる人物のレイアウトも測ったように美しく、ドライヤーの『ゲアトルーズ』を想起…長回しの多用や得意の鏡使いは流石のバルハウス…人物の関係性を足元のリズミカルなステップで捉えるのは斬新です…。
ファスビンダー自身の恋愛をベースにし、支配の立場が逆転する様を切れ味鋭く描くところがクール…。
そして喜劇とも取れるような見事な結末…小気味いいです…ෆ*