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ペトラ・フォン・カントの苦い涙のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

4.0
ニュー・ジャーマン・シネマの鬼才、1982年に37歳の若さで亡くなったライナー・ヴェルナー・ファスビンダーが1971年に書いた5幕構成の戯曲を、自ら監督・脚本して映画化した室内劇。
ヒロインの仕事場を兼ねた部屋だけを舞台に、複数の女性たちの間で濃密かつ壮絶な愛憎劇が展開される。
ローポジションで撮られる構図、登場人物の計算された所作、多彩な衣装や絵画による室内装飾、色彩と美術、印象的な音楽の挿入など、ファスビンダー監督の様式美の頂点。
冒頭に「本作でマレーネを演じる者に捧ぐ」という献辞がある。
撮影はミヒャエル・バルハウス。
原題:(独) Die bitteren Tränen der Petra Von Kant, (英) The Bitter Tears of Petra von Kant
(1972、2時間4分)

アトリエを兼ねたアパルトマンで、優雅に暮らす著名なファッションデザイナーのペトラ(マーギット・カーステンゼン)。
最初の夫とは死別し2番目の夫とも離婚し落ち込む彼女は、口の利けない助手のマレーネ(イルム・ヘルマン)を奴隷のように扱う一方、友人が連れてきた若くて美しいカーリン(ハンナ・シグラ)に惹かれ同棲するが…。

~登場人物(登場順)~
・ペトラ・フォン・カント(マーギット・カーステンゼン):35歳。著名なファッションデザイナー。サド的性格?
・ 助手マレーネ (イルム・ヘルマン) :影の主役。ペトラに従順に仕える。マゾ的性格?
・友人シドニー(カトリン・シャーケ):男爵夫人。ペトラにカーリンを紹介。
・カーリン(ハンナ・シグラ): 23歳。自堕落で奔放。ペトラを利用する。
・娘ガブリエレ/ガビ (エファ・マッテス):最初の夫との子ども。10代半ば。
・母ヴァレリー(ギーゼラ・ファッケルディ)

「嘘をついてほしいのね」

「あなたに必要なのは自由と喜び」

ファスビンダー監督の様式美に息をのむ。
同性愛(レズビアン)を描いているが、愛がない相手に捨てないでと縋り怒りの矛先を身近な人に向ける姿は見苦しくかつ残酷なのは、異性間でも同様。
ペトラに罵倒されながらも従順に従い、じっと観察しているマレーネの存在感。
そして、人には、居たたまれなくなったら、残酷で異常な閉ざされた空間から"逃げだす"という選択が許される…。
なお、使われる曲は、
ザ・プラターズの「煙が目にしみる」、ウォーカー・ブラザーズの「イン・マイ・ルーム」、ザ・プラターズの「グレート・プリテンダー」など。
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