ファスビンダー作品唯一のブラックコメディ。自身が『マルタ』で盗作の嫌疑をかけられた経験から(あるいは、その経験からの脱却のために)、ゲオルグという詩人と全く同じ文章を書いた男、ヴァルターの顛末を描く。
しかし、ヴァルターはそれを否定したり気にしたりすることなしに、自分が詩人ゲオルゲなのだ、と信じ込む。ヴァルターとゲオルゲは似ても似つかないが。
最後、彼の世界は崩壊したように思えるが、そもそも最初から破綻した世界だった。コメディでありながら過激描写を積極的に取り入れる様や、ラストの狂った展開も、真面目な観客をコケにする。これこそコメディの持つ真の崇高さのように思える。