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IT/イットのCANACOのレビュー・感想・評価

IT/イット(1990年製作の映画)
3.4
リメイク版『IT』を観た時は、原作『IT』が、イリノイ州シカゴで起こった連続殺人事件をベースにしていることを全く知らなかった。

Netflixで『殺人鬼との対談:ジョン・ウェイン・ゲイシーの場合』を観た。自宅に悪い目つきのピエロの絵を飾り、パーティでピエロに扮していた“本物”が、自分の罪を語っている。担当警察官や殺人鬼の弁護人、未遂で終わった被害者本人や被害者家族のインタビューを編集した3部作で、これまた計3時間3分の大作だ。
そこにも収められていない話がwikiと照らすとまだあり、漏れているエピソードが(犯人はさておき)『死刑に至る病』の原作のベースとなっている。甘い言葉をかけてから恐怖を味わう、最低でも33人は殺した“本物”のペニー・ワイズだった。

それを踏まえて『IT』を観ると、ペニー・ワイズも弱虫クラブの一員であったこと、同性愛は重要なファクターであったこと、ペニー・ワイズはもちろん、7人の子ども達が抱えるトラウマ、激しい暴力性を持った不良少年達すらも、ジョン・ゲイシーの一部だったことがわかる。ペニー・ワイズの棲家がなぜ下水道(地下)なのかも。

あの陰惨な実話を、ホラー版スタンド・バイ・ミーに昇華させたのは偉業。映画は、より実話に近い恐怖を感じられるのは1990年版だし、派手好きで本当は弱虫の化物と健気に闘う物語としてより昇華されているのは2017年版だと思う。

強いていえば、本作は7人のメンバーの明暗がリメイク版よりくっきりしていて、「なぜあの子が」とやるせない気持ちになる。しかしそれは、「なぜうちの子が選ばれたのか」と問い続けている実話の被害者家族と同じで、答えなどない理不尽さまで伝えたかったのかもしれない。
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