豚肉丸

ミークス・カットオフの豚肉丸のレビュー・感想・評価

ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)
4.3
西部開拓時代の真っ只中、三組の開拓者の家族たちは「近道を知っている」と言うミークに着いていくも、歩けど歩けど目的地には到着せず......というお話

初ケリー・ライカート。
物語の導入部分を省略して描くことで永遠とだだっ広い砂漠の中を歩くだけの物語になっていて良い。映画の最初から砂漠を歩き続け、その調子で最後まで砂漠を歩き続ける。
その単調で地獄とも形容できるような砂漠の行進をリードするのは、唯一近道を知っているらしいミークという人物。しかし彼の言動も行動も何もかもが行き当たりばったりで本当に近道を知っているのか信用ならない。水も食料も尽き始めて次第にミークへの不信感が高まってきた頃、会話の成り立たない先住民の男が登場する......

『逆転のトライアングル』的とも言える主従関係の逆転が面白い。リードの役割がミークから先住民の彼に移り始める流れもそうなのだが、それに同調して「女性」にも着眼点が当たるようになる流れが良い。
先住民を生かすべきか殺すべきか、ミークを信用すべきかについて男たちが議論する中、カメラはその議論から省かれた女性たちを映す。
先住民族の男を捉える場面を描かず、ミーク達が先住民の男を捉える間に放置された人々の姿を映す。映像の外しが物語のテーマ性と深く関わっており、単調で一本道の物語ながらも、静かに「西部劇映画」の脱構築を試みているようでなかなか面白かった。
豚肉丸

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