カタパルトスープレックス

ミークス・カットオフのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)
3.9
ケリー・ライカート監督による西部劇でありお得意の「動かないロードムービー」でもある。

移民団を離れて西に向かう三家族の話。スティーブン・ミーク(ブルース・グリーンウッド)に道案内を頼むが、二週間の予定が五週間経っても辿り着かない。水も無くなってきた。果たして家族は目的地に到着することができるのか?……という話です。

前作『ウェンディ&ルーシー』もそうでしたが、出発点と終着点は描かれない。ただオレゴンで立ち往生する。実際には動いているのですが、景色が全く変わらないし、どこを歩いているのかもわからない。

タイトルとなっている「ミークス・カットオフ」は実際にある西部へ抜ける近道(カットオフ)で、その名前の由来となったスティーブン・ミークは実在した人物。ただ、本作で描かれるスティーブン・ミークは本当に土地に詳しいのか怪しい人物。

本作のテーマは「オルタナティブ西部劇」でしょうか。途中でインディアン(ロッド・ロンデュー)が登場するのですが、当然ながら言葉は通じない。ただでさえスティーブン・ミークに不信感を募らす家族たちですが、さらにインディアンをどうしようか問題にも直面。ただ、何か大きなイベントが起きるわけではなく、淡々と時間だけが過ぎていく。そして、水も無くなっていく。

キャラクター造形の中心にいるのはスティーブン・ミークとテスロー夫人(ミシェル・ウィリアムズ)です。スティーブン・ミークが怪しい山師的な人物だとしたら、テスロー夫人は表向きは淑女に見えるが、やはり賭博師と言える。そして、その「賭け」の鍵を握るのがインディアン。ミシェル・ウィリアムズはやっぱり魅力的な女優だよなあ。