むるそー

ミークス・カットオフのむるそーのレビュー・感想・評価

ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)
4.6
19世紀半ば、新天地を求めて西へ向かう3家族の旅は、物資の枯渇や変わらない風景によって過酷さを増していた。今どこで後どのくらいで着くのか、進んでいる道は正しいのか。不確かさは一行の精神を蝕んでいき、そのフラストレーションはガイドとして雇われたミークへの不信感へ直行する。そんな中、1人の先住民が一行の手によって捕まり…

殺人も撃ち合いもカタルシスもないアンチ西部劇な本作は、あまりにも冷静に人間の本質を突きつけてくる。夢と希望を求めて西に向かう彼らの旅で見えてくるのは厳しい現実と醜い人間の性だけ。

分からないということが恐怖につながり、それはやがて攻撃や排斥へと向かう。旧来の西部劇の体現者であるミークの正しさが描かれないのは当然だが、そんなミークに反発する主人公のエミリーですら、ミークへの不信と憎悪でしか自身の意見を決められない同じ程度の人間として描かれる。捕虜の先住民はというと、悪鬼として描かれるわけではもちろんないが、聖人として描かれるわけでもない。ただひたすら、"分からない"。

ファーストカウではあんなにも人間への希望に満ちた終わり方をしていたのに、約10年も前に作られた本作はその真逆のようにも見える。だからこそ、ファーストカウの2人の絆がより尊いものに思えてきてほっこりした。
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