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ミークス・カットオフのmasatのレビュー・感想・評価

ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)
3.2
西部の開拓地を目指す一行の影が行く。
荒れた大地を黙々と、河を渡り、丘を登る。そんな淡々と映画は進んでいくのだが、左右が狭いスタンダードサイズに、まるで50年代の西部劇の様な豊潤なフレームが創り出され、さらに色が鮮やかで、陰影に富んだ見事なグレーディングが施されていた。伝統とデジタルが犇めき合っているかのようで、目を見張る。

アメリカ・インディペンデントの“至宝”と言われているこの監督、ホント、観客を遠ざける技に長けている。
だから、商業性から一定の距離を保ちながら、潤沢な予算のない道を自ら選んでいるので、そういう事なのだ。

簡単に言うと、リアル過ぎるくらいリアルな西部劇。なので、映画のマジカルさはないのだが、その何もない!という事の中にマジックを駆使している訳だから、侮れない、いや、それどころかこびり着く印象を遺す。

へそ曲がりながら、キッチリと必要なショットのみを撮り、繋ぐと言う、昨今の映画が及びもしない真摯なストイシズムが、真の映画の姿として、胸を打つ。

アメリカにとってのアイデンティティ、“西武開拓”の、良くもあり悪くもあったその“すべて”を、結果として104分の中に描き込んでしまったのだから、孤高の作家はやはり凄いのだ。
『キラーズ・オブ・フラワームーン』(23)という大駄作を観た後だから、尚更感情が昂まる。

ミシェル・ウィリアムズは、こんな凄い女優だったんですね。どのショットも目が眩むほどの映画的佇まい。特にラストの、相手との切り返しの3カットは、震えます。
ある人物に未来を託す、かどうか?の、あの彼女の顔。ある人物は、どこへ連れて行こうと決めたのか?あの向かう先はどこか?それ以前に、ある人物に委ねるのか?
因みに、ある人物とは・・・いつの日か、目の前の白人に、頭の皮を剥がれる種族である。
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