大道幸之丞

私の男の大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

私の男(2013年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

原作を読んでいないが、原作はきっと名作なのだろう。

それだけ映画化にあたり原作と置き換えた要素をいくつか感じた。

津波で家族を失った花を淳悟が引き取る場面で、話の行く末はおおかた予想がついた。お互いに「家族」を欲してしたのだが、家族へ傾ける愛と異性への愛も結局同じ「愛」に変わりはない。区別は難しい。しかしそうなると行く末は破滅しかないのだが、それはそうならないのか、破滅ならどんな破滅となるのかが気になる。

大塩の親父さんの娘・小町は淳悟に嫁がせ、花を暁にもらいたいと大塩は願っているが、その願いこそが自らを破滅させる要因になる。小町は花を警戒し花も小町を邪魔に感じ「あなたには無理だ」と告げる。

これは後に花が彼氏を連れてくると「お前には無理だ」と同じ言葉を告げる
淳悟と花は自分たちのつながりを無二のものだと信じて疑わない。

花が高校生時代、2人はお互いを引き裂きかねない要素には断固立ち向かい、究極、殺人も厭わない。それぞれが1人ずつ殺したところで、両者乗り越えた感がある。先に歳をとる淳悟は花が、例え他の男と付き合っても結局自分のところへ戻ってくるとの確信があるが、花は淳悟だけしか見えないわけではなく、女性は現実に生きるものが故か、もしかするとはじめから終わりしかない淳悟との愛はどこかで区切らねばならない宿命を感じているフシがある。

娘を持つ父親達は時折「娘の連れてくる彼氏とやらに俺は結局嫉妬してんのかなと思うことがある」と語る事がある。男親は「自分の娘だから好きになってはいけない」とまでは決めきらないのである。

警官を殺してなぜ不問だったのか、逃げおおせたのかは小説なら判明するのだろうか。原作も是非読んでみたい。

終始流氷が押し合う「ギュッギュッ」という音と、のどかに流れる「遠き山に日は落ちて」が北の端っこの地に追いやられた空気感を常に醸成している。

キャスティングが良く、特に河井青葉さんがはまり役で、幸薄そうで、東京から葬儀で戻ってくるとケバ目になっているなど生身の女性「らしくて」いい。