似太郎

私の男の似太郎のレビュー・感想・評価

私の男(2013年製作の映画)
4.0
【地獄へ道連れ】

熊切和嘉監督は毎回イキそうでイカない「う〜〜っ」て感じの消化不良感が付き纏う作品が多いのだが、とにかく画作りが重厚で『空の穴』や『海炭市叙景』など地元である北海道の雄大な景色を眺めてるだけで満足してしまうズッシリとした感覚がある。

浅野忠信と二階堂ふみ主演コンビによる『地獄の逃避行』で『ハネムーン・キラーズ』といった趣向がユニークな犯罪サスペンス。🔪
SEXシーンは中途半端だし物語は破綻してるし、粗を上げればキリが無いのだが映画監督としての「力量」はマーティン・スコセッシレベルと言っても過言じゃない。

メガネ少女でビッチの二階堂ふみが浅野忠信とタメを張れる程のインパクトがあり、園子温の『ヒミズ』とは違った意味で凶悪なオーラを放っている。疎外された男女の逃避行…。🤔
ニコラス・レイのノワール『夜の人々』から『俺たちに明日はない』まで続々とあるアメリカン・ニューシネマの系譜を感じさせる。

桜庭一樹の原作小説の時間構成を大幅に変更し、過去から現在へと至る迄の殺人カップルによる道行きがドロドロしたタッチで描かれる。この二人の関係は確かに醜悪なのだが一切「嘘」が無い。綺麗事を極力排した血生臭くリアルな映像センスは少なくとも自分のハートに刺さった。💘

熊切和嘉らしい毒気とある種の人間臭さが根底にありそこまで嫌いになれない作品。純粋な二人の「絆」や「繋がり」を異色のアプローチで描いたモスクワ映画祭グランプリ受賞作。本作以降、この監督は低迷したようにも感じるが生々しい迫力のある映像美に仕上がっており総じてグッジョブ。いわゆる擬似親子モノの異色作。
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