このレビューはネタバレを含みます
汚らわしくいやらしい禁忌の関係から拡がるのはどこまでも暗く腐敗した背徳の世界
そこでは父娘がお互いを唯一無二の存在として求め合う危うい均衡が保たれていた
しかしある出来事を境にその均衡は崩壊し、二人はお互いをがんじがらめに縛り合う鎖となってしまう
その先にあるのは破滅のみ
作家桜庭一樹の小説から生み出された衝撃は私の心のど真ん中を撃ち抜いた
映画化されたと知った当初から、失望感を味わうのを恐れるあまりこれまで観るのを躊躇っていた
狂おしいほどの感性がほとばしる、彼女の書きあげた世界観が映画では十分に表現されないのではと案じたからだ
映画公開から十年が経ったところで思い切って観賞
違う
そんなことじゃない
そんなものじゃない
「私の男」のもつ世界観はやはり桜庭一樹の原作でしか表せない
私の中の「私の男」という作品は原作の中にのみ留めておくことにした