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ニルヴァーナの一人旅のレビュー・感想・評価

ニルヴァーナ(1996年製作の映画)
4.0
ガブリエレ・サルヴァトレス監督作。

イタリアの鬼才ガブリエレ・サルヴァトレス監督が脚本と演出を手掛けたイタリア製サイバーパンクで、近未来を舞台に凄腕のゲームプログラマーの戦いを描きます。

二次大戦時のギリシャの孤島におけるイタリア兵ののほほんとした日常をユーモラスに描いてアカデミー外国語映画賞を受賞した前作『エーゲ海の天使』(1991)から180度作風を転回させた異色のサイバーパンク映画です。近未来を舞台に、日系ゲーム会社:オコサマ・スター社の新作ソフト「ニルヴァーナ」の開発者である天才ゲームプログラマー:ジミーが、ウイルス感染によって自我に目覚めたゲーム内の中年男性キャラクター:ソロを“繰り返しの日々”という永遠の地獄から救い出すべく、オコサマ・スター社のデータバンクにハッキングしてゲームデータを全消去すべく個性的な仲間たちと共に奮闘していく様子を描いています。

『ブレードランナー』(1982)を彷彿させるパンク&ダークな近未来都市景観と、『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』(1995)や『マトリックス』(1999)のように現実と仮想の交錯した映像世界の奔流で魅せていく本格派のサイバーパンク映画で、ゲームのキャラが突如として自我に目覚めるというシチュエーションは近作『フリー・ガイ』(2021)の先駆けとも言えます。騒々しさの絶えない映像&音楽と目まぐるしい会話の応酬の中に、ゲームという仮想世界に囚われた住民たちを救い出すべく現実世界と仮想世界の双方で戦いを繰り広げるゲームプログラマーの葛藤と勇姿をスリリングに活写した異色のSFサスペンスで、サイバーパンク好きなら見逃せない隠れた名作であります。

主演のクリストファー・ランバートが消息不明の恋人を想いながら巨大企業を相手にサイバーな戦いに身を投じる天才プログラマーを力演していますし、主人公の恋人リザ役でエマニュエル・セニエ、自我に目覚めるゲームキャラ役でディエゴ・アバタントゥオーノら仏伊の実力派が集結しています。
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