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ロマン・ポランスキー 初めての告白のSariのレビュー・感想・評価

3.8
東欧仕込みのアート志向と大衆を先取る視点で『チャイナタウン』や『戦場のピアニスト』など華麗なキャリアを持つ巨匠ロマン・ポランスキー。

しかし、その過去は悲劇とスキャンダルが乱高下するドラマチックな人生だ。本作は、そんなロマン・ポランスキー自身が目撃した真実を数々の傑作の名シーンと共に語りおろす。ポランスキー監督の長年の友人であり、共に幾つもの映画製作に関わってきたアンドリュー・ブラウンズバーグ(本作の製作兼任)が、監督の過去について話を聞く対話式インタビューのドキュメンタリー。

▪️ポランスキーのキャリア
ポーランド系ユダヤ人としてパリに生まれ幼少に帰国。ナチの殺戮に直面した思春期が描かれる。両親はナチスに捕まり、父親は採石場で強制労働をさせられていたが、終戦まで生き残った。父親違いの姉と母親はアウシュヴィッツに送られてたが、姉は生き延びパリで暮らす。第二次世界大戦時は、ドイツがクラクフに作ったユダヤ人ゲットーに押し込められた。ゲットーのユダヤ人が一斉に強制連行される直前、父親はゲットーの有刺鉄線を切って穴を作り、ポランスキーはその穴から脱出に成功、その後は各地を転々とする。妊娠中だった母親はアウシュヴィッツで虐殺されたという。

戦後にボーイスカウトに入り、演技を学ぶ。俳優としてキャリアをスタートし、アンジェイ・ワイダの短編でデビュー。その後、スコリモフスキとの共同脚本の初長編『水の中のナイフ』でヴェネチア映画祭受賞。
カトリーヌ・ドヌーヴの演技が鮮烈なホラー映画『反骨』、ドヌーヴの姉フランソワーズ・ドルレアック主演『袋小路』でベルリン映画祭グランプリ受賞。

初の米国進出でサイコホラーの傑作『ローズマリーの赤ちゃん』と成功続きの翌年、人生最悪の悲劇に見舞われる。妊娠中の妻で女優のシャロン・テートがカルト教団マンソン・ファミリーの生贄となったのだ。
'77年に未成年わいせつ容疑で米国を離れたことなど、ポランスキー監督自身の口から語られる壮絶なエピソード。
そんなポランスキー監督には、彼の映画以上に私生活で騒がせてきた変わり者との偏見の目で見られることが多いだろう。だが、本作を観ると、壮絶な人生を送りながら、ポランスキー監督本人は至極真っ当というのか、とても誠実であるようにも思えるのが少し意外であった。

戦後の壮絶体験として、事件そのもの以外に、マスコミに勝手な憶測で作り上げられた‘虚像‘に苦しまされてきたこと。本人の口から話を聞くと、これまでマスコミ経由の情報だけで判断してきた彼のイメージとのギャップを感じる。ポランスキー監督にはそう思わせる誠実さや人の良さが感じられた。
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