うえびん

ラッシュ/プライドと友情のうえびんのレビュー・感想・評価

ラッシュ/プライドと友情(2013年製作の映画)
4.0
コックピットの中の孤独と恐怖

2013年 アメリカ作品

F1マシンのコックピットは「走る棺桶」とも言われるそう。ほぼ地面に対して水平、最低地上高6cmのすれすれのドライビングポジションで、時速300キロの車体を操る。毎年25人が参戦して、うち2人が死ぬという。レーシングドライバーという命懸けの仕事がリアルに描かれている。レースシーンもテレビ中継では味わえない臨場感にあふれている。

テレビでの地上波放送が2011年に終わってから、めっきりF1を目にする機会はなくなった。F1日本グランプリの人気のピークは1994年、鈴鹿サーキットに35万人を超える観客が集まったという。僕がF1をよく観ていたのは、1990年前後、アイルトン・セナ(マクラーレン・ホンダ)とアラン・プロスト(フェラーリ)の二人のライバル対決が面白かった。テレビ中継の際のTスクウェアのテーマ曲は今でも鮮明に思い出す。

本作で描かれるのは1976年のF1グランプリ。この年のグランプリを盛り上げた2人のレーサー。天才肌のジェームス・ハントと頭脳派のニキ・ラウダ。正反対なタイプの2人が、命懸けのレースに身を投じ激しく争いながらも、お互いを認め合ってゆく過程が、とてもいい。

モータースポーツは、スピードレースショーとして、スポンサーや観客にとっては派手で華やかな世界だけれど、ドライバーにとっては、孤独で死の恐怖との闘いであることがリアルに伝わってくる。ハントとラウダには、二人にしか体験できない世界があって、それを分かり合える二人だからこそ好敵手となり得たんだろう。ラウダの大事故からの復帰後のレース「完全無欠の4位」は、再現であっても胸に込みあげるものがあった。

最近でもバスケットボールやラグビーのワールドカップが行われているけれど、いつの時代のどんなスポーツであれ、「世界チャンピオン」を目指すことで生まれる人間ドラマは観る人の心を熱くする。
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