ドント

天狗飛脚のドントのレビュー・感想・評価

天狗飛脚(1949年製作の映画)
4.4
 1949年。ウオーッ!!!!! ぶっ倒れるほど面白かった!! 俊足の盗賊が現れ、熱病が忍び寄る江戸の町。あこぎな引き抜きで苦しんでいた飛脚稼業の「天狗屋」にふとした契機で雇われた超絶韋駄天野郎を中心に喜怒哀楽が駆け巡る音速時代劇。
 とにかく編集と演出が大変フレッシュで今観ても古くない。天狗屋の三馬鹿の動きがいちいち揃うところなんざ良い意味でアニメ的で楽しいし編集もピッシピシ。少ない描写で過不足なく心理心境を語る手管、かと思いきやあえて間延びさせるギャグ(のれんの天丼! 志村喬の鈍さ!)などあらゆるモノが切れまくっている。すごい。
 物語にポツポツ配置しておいた布石を怒濤の如く回収して主人公に抱えさせラストの超絶おいかけっこの興奮に収束させる脚本もあまりに見事。よく考えたら大阪に着いたからと言って即勝負ありなわけではないので終盤の字幕は不要なのだが観ている間はこれがもう七転八倒、手に汗握るばかりの演出と化しており、これこそが映画というもののパワーなのだと心が震える。
 この密度でなんと80分未満。まさに神速な痛快無比の娯楽映画と言ってよいだろう。いやぁいいものを観た。映画の歴史にはまだまだこういうすごいものが存在している…………
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