シンタロー

殺意の夏のシンタローのレビュー・感想・評価

殺意の夏(1983年製作の映画)
4.1
南フランスの小さな街に、ドイツ人の母と足が不自由で寝たきりの父と共に、エリアーヌ(通称エル)という19歳の美しい娘が越してきた。露出狂で奇抜な行動をとるエルは、ひときわ異彩を放っていた。エルのどこか悲しげで孤独な佇まいに心を奪われた自動車修理工で消防士のフロリモン(通称パンポン)は、弟2人、母、伯母と暮らしていた。やがてエルはパンポンの家に転がり込み、同居を始めるのだが…。
気弱で冴えない男が、天真爛漫な美女に翻弄されながら幸せな結婚を迎える序盤から、パンポンの家にある謎の自動ピアノの存在と、エルの心の奥底に秘めた決意が語られだして大きく方向転換。エルの強烈な復讐心を掻き立てるものは何なのか。登場人物達の回想を混じえて、ミステリアスに展開していきます。単なる謎解きではなく、なぜエルが奇異な行動をとるのか、情緒不安定な心の闇の元凶に迫っていくあたりが見どころ。あまりにも悲惨な結末は悲し過ぎて忘れられません。
当時28歳が19歳の役。日焼けメイクにこのパーマ。かなり無理のある設定も、類稀な美貌と演技力でこなしてしまうイザベル・アジャーニ様に脱帽。「ポゼッション」から「サブウェイ」あたりが人気絶頂期で出演オファーは殺到していましたが、わがままでエキセントリックな言動も目立ち、バッシング報道が加熱していた頃です。この役は一旦断ったにもかかわらず、新進女優ヴァレリー・カプリスキー主演に決まったものを奪い返したエピソードが有名です。作品はフランスで大ヒットし、彼女も「ポゼッション」以来、2度目のセザール賞主演女優賞に輝きました。アジャーニのヌードが最も美しい作品でもあり、ファンは必見です。パンポン役にフランスでは歌手として有名なアラン・スーション。どんなに振り回されても、一途に愛し続けた男の悲哀を好演しています。弟のミッキー役には、私的に好きな仏俳優フランソワ・クリュゼ。まだ無名に近い頃で若くて可愛らしい。耳の不自由な伯母を演じたシュザンヌ・フロンが見事なお芝居で、アジャーニとのシーンはどれも素晴らしかったです。
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