akrutm

ローマの教室で 我らの佳き日々のakrutmのレビュー・感想・評価

3.8
ローマの公立高校を舞台に、様々な境遇の生徒たちと向き合う3人の教師を中心に教育現場の様子をほのぼのとユーモラスに描いた、ジュゼッペ・ピッチョーニ監督のドラマ映画。作家のマルコ・ロドリがローマ郊外の高校で30年にわたって高校教師として教鞭をとった経験を元に執筆したエッセイ集『赤と青 ローマの教室でぼくらは』が原作で、3人の教師および1組の生徒のエピソードを中心とした群像劇になっている。

深刻になりすぎずユーモアを交えながらも、教育の考え方が違う教師たちが生徒に向き合うエピソードがリアルに描かれている。教師は学校内でのみ生徒と向き合うべきで、学校外の生徒の私生活にまで踏み込むべきではないと考える校長のジュリアーナは、母親が失踪して困っている生徒が気になって、学校外の生活の手助けをするが、一線を超えることはしない。代用教員として赴任したばかりの熱血漢のジョヴァンニは、不登校がちの女生徒の母が亡くなったとの言葉を信じて生徒に真摯に向き合っていくが、他の生徒から彼女の母親を見かけたと聞いて態度を変える。ベテラン教師のフィオリートは、頭が空っぽな生徒に教える意味はないと教育への熱意を失っているが、昔の教え子に出会って、少しばかりの喜びを感じ始める。

これらのエピソードの結末は、よくある教育映画とは異なり、単純なハッピーエンドでもないし、そうかと言ってバットエンドでもないというのが、本映画の特徴であろう。3人の教師を演じるのはイタリアで活躍する名優たちであるので、映画そのものの質も高い。ちょっと引いたスタンスの教育映画も、たまにはいいかもしれない。
akrutm

akrutm