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バーニー みんなが愛した殺人者のsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
町一番の人気者はなぜ殺人を犯したか。
何が善行で、何が蛮行かジワジワ考えちゃうブラックコメディ。


最近、千葉で「20年続いた近隣トラブルの末、人のいいお爺ちゃんが、トラブルメーカーで嫌われ者のさんを勢い余って殺害。近隣住民から刑の軽減を求める1000人を超える嘆願書が出される」ニュースを見て、この映画を思い出して再見。

千葉の事件はこんな
「みんなに迷惑かけないよう殺した」20年超続いたご近所トラブルの末の惨劇 1千人が減刑嘆願した理由とは…
http://www.sankei.com/premium/news/160619/prm1606190007-n1.html

リチャード・リンクレイターとジャック・ブラックが「スクール・オブ・ロック」以来の再タッグ。1996年にテキサスで実際に起こった殺人事件をブラックユーモアと悲哀を込めて描いた犯罪コメディドラマ。テキサス州の田舎町で葬儀屋を営むバーニーは、誰にでも優しく慈愛に満ちた人柄で町民から慕われていた。一方、金持ちの老未亡人マージョリーは偏屈な嫌われ者だったが、心優しいバーニーはひとり暮らしのマージョリーを気遣い、たびたび家を訪問して相手をするようになる。やがて心を許したマージョリーはバーニーに銀行口座まで預けるほどになるが、ある日、バーニーはマージョリーを殺してしまう。バーニーはその後もマージョリーが生きているかのように演出を続けるが……。


振り返れば、リンクレイター監督は「6歳のボク〜」撮ってる間にも、こんな面白映画を撮ってたのかと驚きです。
ジャック・ブラックの歌と踊り、マコノヒーのテキサス訛り炸裂、シャーリー・マクレーンの糞婆ぷり……それぞれ素晴らしいのはもちろん、実在のカーセージ町民と俳優をまぜたインタビューを含めたモキュメンタリーな作りも面白いです。
バーニーの聖人並みの愛され・尊敬されっぷりもさることながら、殺されたマージョリーの嫌われっぷりもなかなか。
途中、小柳ルミ子・賢也夫妻の顛末に脳内変換しながら見たせいで2倍楽しめました。嘘です。

映画そのものをバーニーとマージョリーの関係、地方検事ダニーの追及が主軸になっているものの、主題は事件よりその周辺にいる人たちの反応と顛末だと思います。
非の打ち所がない程の善人が、誰からも嫌われて殺されて当然と思われる人を殺してしまった事件で、遵法精神に則って冷徹な裁きを下すのが妥当か、温情に拠って減刑するのが当然か…罪と善行、観客それぞれの定義を見つめ直すような話かも。




バーニーはその後、映画の公開に合わせて事件が改めて注目され再調査。結果、10代の頃に性的虐待を受けていたことが判明。検察側はそれを根拠に減刑に応じて早期釈放されました。早期釈放の条件として、リンクレイター監督の自宅ガレージ上に住んで、市内から出ないで、社会復帰を目指すこと。だったそうで、2年に及ぶ監督と支援者の活動が実った形に。
現在は事件を担当した弁護士の元でアシスタントをしながらカウンセリングに通い、社会復帰を目指している最中だとか。
終身刑からここまで大幅な減刑があるってのも、アメリカってすげえな…と驚くばかりでした。
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