レインウォッチャー

ヌイグルマーZのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

ヌイグルマーZ(2013年製作の映画)
3.5
トゥットゥル~。
《ヲタク》というワードと存在がすっかり市民権を得て久しい世の中だけれど、新世紀序盤においてその土壌固めに貢献した人物として忘れてはならないのが、我らがしょこたんこと中川翔子であろう。

「好きこそものの上手なれ」という諺を体現するかのごとく、サブカルを軸にした様々なフィールドで趣味と実益を叶えていくと同時に常にとびきり可愛くあり続ける(しかしたまに隠し切れない闇)進撃は、ヲタクの新たな「あるべき姿」となった。

さながら、ドラクロワが描いた自由の女神のごとく…なんていうと過言だろうし彼女にそんなつもりはさっぱりないのだろうけれど、まあ「あわてんぼうの弥勒菩薩」くらいは言って良いと思っている(過言’)。それまでにもきっと彼女みたいな魂の人はたくさん居たろうけれど、彼女によって道が開かれて救われたと感じた人は少なくないはずだからだ。

そんな彼女が主演する貴重な映画ということなので、観終わった結果は《感謝》であった。

戦隊ヒーローとコスプレ好きとしても知られる中川翔子が全力で楽しそうに演じるロリータファッションのダメ子こと鮎川夢子、彼女の表情はガチで全カット輝いている。これは間違いなく、愛と信頼の賜物だ。
特に「ヴッ」とか「ゲフッ」みたいなぎゃふん顔がサマになっていると思うし(楳図スピリットのなせる業だろうか)、黄色いママチャリすらやけに似合っている。

ヒーローのヌイグルマーに変身した後は、スタントの関係かついでに体が武田梨奈にチェンジしてしまうのだけれど、後半にはしょこたん自身のアクションも一部ある。無理矢理ねじこんだヌンチャクシーンは、ブルース・リーファンでもある彼女へのご褒美だろうか。

正直なところ、アイドル映画的な枠を取っ払って真面目に観ようとすれば、特撮ヒーロー番組をビレバンの店内空気で溶いて薄めたような代物ではあり、ストーリーも各所のパーツがすっ飛んだまま進んで行く危なっかしいもの。
しかしこれが思いのほか大事なことを言っていて、辛い現実に立ち向かう術としての《想像力》を説く。文系ロッカー・大槻ケンヂらしい(※1)メッセージと感じつつ、これってしょこたんそのものじゃん、とも思うところ。

その他、急にアクションが本気だったり、M・A・O(akaゴーカイイエロー)のスク水まで拝めたり、と意外と見どころには事欠かない。マジメでリッチでハイファイな映画に疲れたとき、「綿いっぱいの愛」で背中を受け止めてくれそうな珍な作品であることは保証できる。

そんな今作も今は昔、中川翔子さんは昨年ご結婚を発表されたりして、別のシンギュラリティを目撃したような気分であった。しかし、彼女のYouTubeチャンネルなんかを覗いてみれば未だにコスプレしたり踊ったりしてらっしゃるので、乗せられやすそうなのは変わっていないのかもしれない。

10年の節目も過ぎたところで、『ヌイグルマーZ2』なんていかがでしょうか。オトナプリキュアとかもあったじゃあないですか。
ともあれ、これからも応援しております。バッカルコーン!

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※1:オーケンによる原作小説は未読なのだけれど、更にそのソースとなったのは彼のバンド・特撮の楽曲『戦え!ヌイグルマー』。映画の中でもこの曲はテーマソング的に使われる(『ヌイグルマーZ』としてリアレンジされている)ほか、他にもいくつかの挿入歌を特撮が担当している。
中でも、中川翔子に歌わせた昭和アイドル風味漂うバラード『遊星歯車機構』は知る人も知らない隠れ過ぎた名曲ではなかろうか。おそらくこの映画のサントラにしか入っていない。