彦次郎

江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者の彦次郎のレビュー・感想・評価

3.5
アパートで天井から覗き見を愉しむ青年、その彼にピエロとの情交(もちろん不倫)を見られて性的興奮を覚える金持ち婦人。2人の邂逅と猟奇退廃的な生き方を描いた日活ロマンポルノによる猟奇サスペンス。この日活ロマンポルノなるジャンルですが大手映画会社日活が斜陽する社を再建すべく作った成人レーベルを指します。‘所定のフォーマットだけ確実に押さえておけば、後は表現の自由を尊重した、自由度の高い映画作品作りを任された’(wikipediaより引用)ということで本作と同年に同監督に撮られた作品が『安藤昇のわが逃亡とSEXの記録』でそのフリーダムさが窺えます。
原作は江戸川乱歩ですが元々変格探偵小説であった短編から名探偵の明智小五郎を除去し別作の『人間椅子』を加え大幅にエロス風に作り変える大胆さ。時代背景は原作同様大正時代になっておりその辺は忠実です。原作と異なり今作の石橋蓮司氏演じる郷田三郎は虚無さを漂わせながらも同類に対する想いから殺人を犯す(違うかもしれないけど多分そんなところ)という動機になっています。どちらかというと郷田よりも大腿四頭筋で2名、毒をもって2名殺害している奥様のほうが殺人嗜好癖の強い危険人物でした。その2人が画家の女性に迫る場面はエロと恐怖と恍惚が入り混じり印象的でした。
衝撃的なラストは昨今の推理小説のドンテン返し以上!
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