YohTabata田幡庸

オンリー・ゴッドのYohTabata田幡庸のレビュー・感想・評価

オンリー・ゴッド(2013年製作の映画)
4.3
「ドライヴ」を初めて友人に紹介されて一緒に観た時、ニコラス・ウィンディング・レフィン監督の世界観に惚れた。
そして東京で彼の過去の作品を上映している事を聞きつけ、いてもたってもいられず駆けつけた。「ドライヴ」もさることながら、彼の他の作品も観たかった為、とは言え彼の世界観に身構えていたのもあり、本作を選んだ。「ドライヴ」後の作品であり、ライアン・ゴズリングが主役なので、そこまでブッ飛んではいないだろうとふんだ。甘かった。直視出来ない程のゴアシーンも多く、思わず手で目を覆ってしまった。同日、本作の後に「ドライヴ」を観たのだが、「ドライヴ」の暴力描写もなかなかな物だった。では両者の違いはなんだったのか。「ドライヴ」の場合、美しくかっこいいシーンが多く、暴力は突発的だ。そして何よりキャリー・マリガンとのシーンが美しく、可愛くて心が温まる。
そして本作。本作の舞台は神秘的なオリエンタルな雰囲気を醸すタイ。今まで、様々な違和感のあるアジア描写を観てきた。然し本作では、その神秘的なオリエンタリズムが魔法の様に機能する。これが正しいタイ描写かは分からぬが、確実にレフィンのスタイルと相まって機能する。そしてそんなタイが、第三の主人公として、常に緊張感を保っている。
場所の他に、「神」と「母」と言うテーマそのものが決定的に本作の不思議な魅力のひとつだと思う。特に主人公にとっての「母」と言う存在は本作において巨大である。本作における「母」は主人公及び監督、ひいては全ての男性にとって絶対的な存在、つまり「神」なのだ。
チャンと言う男はそれに相対し、自身を神とする。そして主人公は神からの罰と許しを受ける。
美しく、痛々しく、カッコ良くて詩的な、然し全く難解な事はない、最高の映画だった。
官能シーンの撮り方がとてもウォン・カーワイ的。
レフィンの映画は大好きだが、彼は相当な変人だと思う。
YohTabata田幡庸

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