らんらん

オンリー・ゴッドのらんらんのレビュー・感想・評価

オンリー・ゴッド(2013年製作の映画)
4.0
登場人物のゆっくりとした所作がとてもタイ的。なんて、あくまでアビチャッポン的なイメージで、タイ人が皆ゆっくり動いているとは思わないけど。

この不可解な物語は、「記憶の感覚の再現」という形でしか理解出来そうもない。

行為の連鎖が描かれるから、レフン監督が意外にもストーリーテラーなことを感じることが出来る。
復讐の連鎖、手に関する物語。正義を掲げる神が時折現れ、それらをぶった切る。
思えばめちゃくちゃな神だが、主人公ジュリアン=レフンの頭の産物と思えば理解出来る。ストーリーを切り刻んでばらばらにして、振り出しの断片に戻すことのみを正義とする神。正義って何、ということだが気にしなくてもいい。思考の物語も、それへの反発とむしろ嫌悪も、実はジュリアンの無意識の生成物だと思えば良いのではないか。むしろ切ってくれることが有り難いし、切ってほしい。相反する力が与えるのは、連続する緊張感というより、やけにクリアな対面ポートレートの瞬発力で、うっかりすると持っていかれる。

この物語には、女は母しか登場しない。かろうじてマイという女性がいるけれどどうやっても母の代替としか思えない。幼女は単なる無垢な良心の具体化としか思えない。あとは単なるお人形さん。身体性を持つ生きた女は全て母に集約されて行き、自ら母殺しの罪を贖うライアン・ゴズリングの表情は如何なるものか。恍惚?諦念?私にはちょっと分からない。

不自由に怒り、不自由を求める。どこまで行けば良いのかはレフンの神のみぞ知る。
まとわりつくネオンの色彩とチャンの歌声は多分恍惚でいいんじゃないかな。
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