幕のリア

ヘヴィメタル・イン・ザ・カントリーの幕のリアのレビュー・感想・評価

3.3
インディ系メタルレーベル世界一である"Nuclear Blast"
ドイツの片田舎の街ドンツドルフで第二の企業に成長した超ローカル企業。

牧歌的な風景と生活の中にデスメタルが静かに喧しく溶け込む様は、なんともシュール。
若い時は、ジョン・テイラーかパティ・スミスかという元イケメン社長は元はハードコア上がり。
今ではポルシェで狭い街を東奔西走しリラックスにはヨガと意識高い系。
それでも正装は自社製品のメタルプリントの上下スウェット、程良く皮下脂肪をまとった体型で、それなりのオヤジ感が全くマネーの虎を感じさせない、郊外のコンビニに軽で乗り付けてエロ本でも立ち読みしてそうな風貌だ。

本作では、メタルが根付いたこの街で暮らす市井の人々にもスポットを当てている。
家業のニッター業に就いた若ハゲのお兄ちゃんが、スカル柄ダブルジャガードの編み地を確認している姿がなんとも微笑ましい。
また、お母さんがサンプルルームにあるミセス用商品を見せてくれるのだが、サイズ感・色合い・デザイン・柄、万国共通のなんともな出来映えも微笑ましい。
ニット自動編み機と言えば、日本の島精機製作所と、ドイツのストール社製が世界のトップ2で有名。

会社の倉庫で全く興味のないであろうメタルグッズのパッキング及びデリバリー業務に対応するオバちゃん達と取り止めのないその身の上話。
野菜を出荷する農家を見てるかのようで和む。

メタルファンには物足りない内容だろうが、お仕事映画、地域文化ドキュメントとしてはすこぶる面白い。

ネットを通じて世界津々浦々の需要を掬う事が出来る時代。
時代に取り残されたくなきゃ出来そうなことから手始めにチャレンジしなければ、と静かに拳を握ってみた。

自分が一番好きな事は仕事にしない方が良いと言う。
選ばれし者の恍惚と不安。
幕のリア

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