皿鉢小鉢てんりしんり

白蛇抄の皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

白蛇抄(1983年製作の映画)
3.7
傑作『犬神の悪霊』を撮った伊藤俊也だけのことはあり、不気味で閉塞感あふれる田舎描写はお手のもの。死んだ未熟児と共に入水自殺した女が引き上げあれ、色気狂いの住職(なんと若山富三郎!)の後妻として下の世話をさせられている、という最初っから行き止まりみたいな舞台設定。彼女は滝壺に沈んだ子を供養しなければならないという使命感に縛られていて、その土地から抜け出せない。こういうところが怪奇映画じみていて実に良い。
夏木勲演じる警官が、小柳ルミ子を救助した際にその裸体に触れたことがどれほど官能的であったかを本人に熱弁する異常さも大変素晴らしい。
ラストはやっぱり家を燃やすというこれまた古典的怪奇映画の趣深く、東映らしからぬ文芸映画らしい語り口も効果的で、伊藤俊也、女囚さそりよりはるかにこっち路線の方が良いのでは?と思う。

あとメインテーマとして流れる劇伴が白雪姫の『someday my prince will come』と絶妙にメロディが似ており、これ“白”繋がりで狙ってやってるなら相当意地が悪い。