垂直落下式サミング

インチョン!(原題)の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

インチョン!(原題)(1982年製作の映画)
2.5
統一教会が莫大な資産を投じて製作した一代巨編。全15作からなる大長編の記念すべき第一作目として位置付けられるはずの作品だったが、これ一作でヤバイ赤字を出したので、幸か不幸か連作計画は幻に消えたそうだ。
監督にテレンス・ヤングを招き音楽はジェリー・ゴールドスミスと力の入れようが半端ではない。さらに配役にも余念がなく、マッカーサー元帥を演じるのはローレンス・オリヴィエ。そして元日本兵の斎藤さんに扮するのは我らが三船敏郎。名監督と映画音楽の巨匠、そして二大名優共演でおくる豪華すぎる布陣で朝鮮戦争を描いている。
あんまり面白くはないが、とりあえず、ちゃんとした映画人を使って、大勢のエキストラを動員して撮影しただけあって、それなりのものをみた感じにはなる。
だがヒロインのジャクリーン・ビセットを綺麗に撮れていないことはテレンス・ヤング一生の不覚。前半はやたら肩幅の広い女として登場し、夫に浮気された挙げ句、前半はずっと車を運転してやがる。もっと美人に撮って。
韓国に北朝鮮の軍隊がいっぱい攻めてきて、戦車で民家を踏み潰し、驚くほど無抵抗な民間人を機関銃で虐殺するところは圧巻の映像。それ以外は本当に退屈な上に、肝心の人間ドラマもつまらないので、後半にミフネ忍者がマシンガンを撃つ場面くらいしかみる価値はない。
DVD化されていない幻の作品と言われる映画だが、手っ取り早く観ようと思うのなら、数年前から動画サイトに10分ほどに分割投稿されたものが上がっている。細かく分割してくれているのは良心的で、ダメだ観るに耐えないと感じたらさっさとスキップして次に行けばいい。
これは恐らく二時間のアメリカ公開版なので、端折ってこれほど退屈とは、元がどれ程のものなのだろうと震えがくる。幻のままになっていれば誰も不幸になることなどなく平穏を保っていたであろうに、今やネット上でその亡骸を白日の元に晒されることとなった哀れなこの作品に神の祝福があらんことを。