Omizu

裁きは終りぬのOmizuのレビュー・感想・評価

裁きは終りぬ(1950年製作の映画)
4.5
【第11回ヴェネツィア映画祭 金獅子賞】
『眼には眼を』アンドレ・カイヤット監督の法廷劇。ベルリン映画祭金熊賞も受賞しており、三大映画祭での二冠は史上唯一。

優れた作品だった。とにかく隙がない。陪審員たちの物語として一番連想されるのはやはり『十二人の怒れる男』であるが、それに先んじてこんな素晴らしい作品があったなんて。

映像的な工夫がしっかりされている。転換や撮影が優れており、印象に残るシーンがあった。テンポも早く、一切飽きさせることなく物語を転がしていくのが素晴らしい。

人が人を裁くということ、そして安楽死は許されるのか。キリスト教の多い欧米ではやはりそれはより議論になりやすいだろう。宗教的な正しさと現実、そして愛との乖離と矛盾を突いた鋭い物語。

陪審員を主に描き、それぞれのキャラクターの背景までスマートに描き出しているカイヤットは流石だとしか言いようがない。

陪審員制度は難しいけれど、社会システム上どうしても折り合いはつけなくてはいけない。その難しさを考えさせられる。陪審員たちの出した結論が正しいものだったのか、それは誰にも分からない。

裁判について、安楽死について非常に考えさせられる鋭い作品だった。もちろん映画としてめちゃくちゃ面白い。必見の一作。
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