イチロヲ

エロスは甘き香りのイチロヲのレビュー・感想・評価

エロスは甘き香り(1973年製作の映画)
4.5
フリーの三流カメラマン(高橋長英)が、仲間たちとの共同生活の中から、新しい刺激を見いだそうとする。芸術家肌の青年の暴走劇を描いている、日活ロマンポルノ。東京都福生市(ふっさし)の元米軍ハウスで撮影。演者が前貼りなしで演技している。

伊佐山ひろ子、桃井かおり、高橋長英、谷本一という癖のある顔ぶれが丁々発止のぶつかり合いを繰り広げる。一見では単なるヒッピー・コミューンなのだが、その奥底ではシラケ世代特有の混沌が渦巻いている。

非日常を追求している主人公のカメラマンは、実質的に桃井かおりのヒモなのだが、「俺はヒモなんかじゃない!」と自分に言い聞かせながら、やっぱりヒモ生活を続ける。超がつくほどのダメ人間だが、どこか共感がもてるダメさともいえる。

何よりも、物語が進むに連れて、カメラマンの奇行に拍車が掛けられていくところが面白い。「おまえ、何やってんだよ!」とツッコミを入れながら鑑賞するスタイルが楽しくなってくる。芥川龍之介・著「地獄変」に着地するのは、この手の物語の定石通り。
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