Sari

ガーゴイルのSariのレビュー・感想・評価

ガーゴイル(2001年製作の映画)
2.5
2022/01/08 DVD

性的興奮の末に殺人を犯してしまう奇病「カニバリズム」という題材で、悲しく狂おしい究極の愛の形を描き、世界に衝撃を与えた問題作。
監督によると、幸せと絶望という両極端が存在する、愛の本質のすべてを排除することなく描いた作品なのそうだ。

主演ベアトリス・ダルの圧倒的な存在感による、血に塗れたセックス・シーンが壮絶。
もはやエロスを超えて、痛々しく苦しい。
『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』(1986)から15年経ち、37歳になったダルは余計なものを削ぎ落とし(恐らく痩せたと思われる)、グラマラスな若い頃より端正な少し恐ろしくもある風貌になっているが、美しい。
冒頭シーンで、コレ(ダル)が草むらで立ちすくみ、着ているコートの前を全開にするシーンが印象深い。それらを含めて、‘’吸血鬼ノスフェラトゥ‘’のイメージが重ねられる、ヴァンパイアには私は繋がらなかった。 
しかし、愛する人を前にしても、恐ろしい衝動を抑えられない悲しい宿命としては、確かにそうなのかも知れない。

このDVDジャケットは、ヴィンセント・ギャロとフロランス・ロワレ=カイユという女優。ソフィー・マルソー似の若い女性で、思いの外主演のギャロとダル以上に、彼女が魅力的だった。ホテルの女性従業員役で出演しているのだが、あれほど残酷な結末が待ち受けているとは思わなかった。
ギャロとダルの共演シーンは、実は少ない。

パリの静けさ、劇伴のTindersticksが醸し出すアンニュイのなかに、激しさが両立している独特のドゥニ・タッチである。
台詞が少なく詩的で、決して嫌いではなく美しいシーンも多くあるが、映像ではなく写真でも充分伝わる世界観というか…そんな思いを巡らせていると、血液をモチーフにした塩田千春のポートレート作品を想起した。
ところで、ドゥニ監督がヴィム・ヴェンダース監督『ベルリン・天使の詩』の助監督を務めていた事すら知らなかった。
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