けー

スヌープ・ドッグ ロード・トゥ・ライオンのけーのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

スヌープ・ドッグがレゲエと向き合うドキュメンタリー。

これまでスヌープ・ドッグの音楽をまともに意識して聴いたことはなかったけれど、人気がすごいのでHip-Hopについてお勉強していると、いつの間にか知るともなしに知っている感じだった。

で、このドキュメンタリーをみて、この人ももれなく相当な修羅場をくぐってきた人だとわかり、驚きを通り越してなんというか、無事に生きのびることができて本当によかったなぁと。今は仕事も私生活も充実してとても幸せそうなので本当によかったとしみじみ。

デス・ロー・レコードはなんだか怖くて悪いイメージしかなかったけれど、メキシカン・ギャングとカリフォルニア・ギャングの抗争を音楽ビジネスによってとめる役割を果たしていたと知って、なんというか怖いけれども重要な役割を果たしていたんだなぁと。

スヌープ・ドッグがデス・ロー・レコードから抜けるときにクラレンスさんに力になってもらったとクラレンスさんのドキュメンタリーで話していたと記憶しているのだけれど、レゲエの旅のこのドキュメンタリーのなかでもシュグ・ナイトとの行き違いから命を狙われて云々という話がでてきていて、なんだか生々しかった。

もう映画かドラマの中の話としか思えないような人生で、そんな修羅場をかいくぐり幾つもの死別を経験しながら、それでもなんというか飄々とした雰囲気をまといながらパフォーマンスしてみせるのがかっこいいというかすごいなぁというか。

キメるときはびっくりするほどシャープでやっぱり怖いような尖った感じとかもあるのにでも普段は穏やかで。Hip-Hopの先駆者たちに対する礼儀正しくて、ごまかしのない誠意と正直さみたいなものについつい引き込まれてしまう。

あとジャマイカで、レゲエがヒップホップと同じような状況のなかで生まれた音楽というか文化とわかって、これも驚いたというか。
なんというかいずこも同じなんだなぁと。
ネトフリに勧められたのでついでに「ReMastered: Who Shot the Sheriff?」というボブ・マーリーのドキュメンタリーもみたけれどなんというか...。

どんなに理にかなった行動をしても、どんなに平和的に物事を解決しようと努めても、どこまでも追い詰められていく。”反体制”というのはもっと物々しい状態のことを指す言葉なのかと思っていたけれどもとんでもなかった。

別にいまのシステムをひっくり返すとまでは言わないから法にのっとって正当に自分たちを扱って欲しいと声をあげると”反体制”のレッテルはられちゃうんだってここにきてはじめて理解した。

なんだかアメリカの先住民のひとたちがどんどんと追い詰められていく様子を克明に描いていた「我が魂を聖地に埋めよ」を読んだときのことを思い出して怖くなった。

言われたとおりに土地を明け渡して、指示された土地でささやかに生きていこうとしても、またそこを追われる。どうか殺さないでくれと、訴えているのはただそれだけなのに。

そこまでして徹底的に存在を殲滅しようとする心理ってなんなんだろう。
恐怖を植え付けるための見せしめのためなんだろうか。



話がそれた。



ジャマイカでは大麻はもともと神事に使われていたそうなのだけれど、健康のためにも有機栽培ものがいいとか、おいしくいただくための工夫とかがすごくって、”お酒”のようなものなのかもしれないけれど、いただき方にそんなバリエーションがあるのかぁと。 
“依存症”なイメージしかなかったので健康のために有機栽培ものがいいというこだわりとかに面食らってしまった。

まぁお酒のようなものなのかしら。
節度ある摂取であれば害はないけれども度をこすと破滅のリスク大有りみたいな。

まぁ私はタバコ及びタバコ文化ヘイターなので、煙まき散らし系はおおっぴらにやらないでいただきたいとしか思えないんですが。

あと、スヌープドックが「おれも同じようなところで育ってきたから気持ちはわかる」とスッと地元のひとたちのなかにとけ込んでいく姿もかっこよかった。

Love & Peaceに目覚めたスヌープ・ドックの発信力に励まされてる人たちがいっぱいいる。

ラッパーの人たちがよく口にする”Respect"、”Love"、”Peace"の言葉の重みを最近よく感じる。

つまるところ望んでいることはそれだけなのに。


「Raincarnated」はとても美しいアルバムに仕上がっている。
ひとことひとことにしんみりさせられたまらない感じ。

ヒップホップがいいなと思うのはお互いを支え合い思い合う強い絆だ。
皆それぞれ違ったスタンスにありながら、ここぞという時の結束力がすごい。
それはずっと表舞台にいようが、すでに表舞台からは身を引いていようが関係ないところがあって、なんだかそういうところがかっこいいなと。

スヌープ・ドッグが話していたことでもう一つ興味深かったこと。

子供の頃、かっこいいと思えるヒーローが麻薬のディーラーかPimp (←ヒモ?ポン引き?)しかいなくて。ディーラーは怖くて嫌われるけれどヒモは皆から好かれるから Pimpになろうと思ったと話していて、子供の頃に憧れのヒーローを持つことって大事なんだなとあらためて認識。
けー

けー