モノクロで混じり合う黒い血が恐ろしく美しい
大好きな『灼熱の魂』『プリズナーズ』のドゥニ・ヴィルヌーブ監督の初期の作品。
カナダのアカデミー賞と言われるジニー賞で、なんと9部門も受賞しているそうだ。
1989年にモントリオール理工科大学で実際に起きた銃乱射事件を題材とした作品だが、登場人物は架空とされている。
「犯人」「一人の女子生徒」「一人の男子生徒」の目線で展開されます。
「人生を破滅させたフェミニストをあの世に送る」
フェミニズムに強い不満を持つ男が女性を次々と銃殺していく。
80分程の短めの作品ですが、悲惨な現場を体験するかの様なリアルな感覚に浸れる。
ただ惨殺していく様子を観るスリラー映画ではなく、数あるシーンに「女性差別」「女性蔑視」問題が巧みに描写されてます。
怪我を負った女性が回復し、やがて妊娠という流れもハッピーかもしれない。
しかし妊娠によってキャリアを断たれる彼女にとってはハッピーと言えるのだろうか。
事件が被害者達に与えた”見えない傷”に苦しむ人の末路も悲惨です。
講義中
「外部の干渉が無い独立型は秩序が不可逆的に失われていき やがて崩壊する」
のところで教室に入ってくる犯人のシーンはまるで自己紹介の様で巧い演出でした。
監督のセンスの良さを改めて感じます