『届かなかった叫びに捧げる鎮魂歌』
1989年12月6日、カナダのモントリオール理工科大学で起きた虐殺事件を題材にした作品。
77分の短い時間で淡々と、それでいて喪に服するように静かに何か儀式のような厳粛さを含んで展開される事件の追体験。
全編モノクロで語られる事件の顛末は突如未来を奪われた犠牲者の瞳の奥のように深い闇が広がっているが、犯人を糾弾するだとか警察の初動の遅れを非難するだとか、そういう次元の作品ではない。
これは"祈り"だ。
若くして不条理にも命を奪われた14人の女学生、そして身体もしくは精神に癒えぬ傷を負った関係者全てへの祈り。
決して起こってはならないことが起きてしまった非情な現実を正面から受け止め、同様の事件が再び起こらぬように戒めとしてフィルムに刻みこまれた、作られるべくして今ここに在る作品。
