パンケーキレンズ

クスクス粒の秘密のパンケーキレンズのレビュー・感想・評価

クスクス粒の秘密(2007年製作の映画)
4.5
これは、久々にやられました♪
ラストに画面が暗転した瞬間の、鳥肌と震えが止まらず、音楽を聞きながら暫く動けませんでした・・・

移民大国フランスに於ける、移民の立場や現状を、「家族」という社会の最小単位をモチーフ(暗喩)にして、社会問題として提示する『別離』系の映画です

やや長尺ながらも、会話がとにかく活きている!

というか、会話だらけの150分
しかし、さすがは『アデル、ブルーは熱い色』の監督さんだけあって、その言葉一つ一つに込められた熱量に魅了されるんですね、例えば、役者Aの話終わりと、役者Bの話始めがカブるとか、リズムも含めて、台本のセリフというより、言葉自体が生きてるんです

クスクスを食べながら、大きな口を開けて笑う
とか、それ以前に
口の回りに食べカスが付くほど(←汚)がっついて食べる
とか、ほんとにお腹が空いて食卓に着いた、なんでもない家族の、なんでもない食事風景は、まるでドキュメンタリーさながらの臨場感です・・・

寡黙な父親と
元妻、そして数人の子供たちと、またその家族
現在の恋人と、その娘

少し複雑な環境ながらも
これこそが移民社会の縮図なんですね・・・

後半はとにかく、衝撃でした
現在の恋人と、その娘が「移民の立場」(よそ者)として描かれていると思って観ていたので、それは実際にそうなんですけど、「さらに底辺の移民の立場」が存在していたとは想像もしなかったので、あの人の(あえて名前はふせます)涙と叫びの、長い長い苦痛と苦悩の吐き出しが壮絶でしたね

それは、まさに、冒頭で主人公が感じていた感情と同じなのではないだろうかと・・・

口数の少ない静かな主人公が、声にできなかった叫び

その抑え込んだ感情

一番底辺の移民達の心情

この苦しみは、いつ、報われるのか・・・

小さな嘘が、大きな破綻を招く
負の連鎖によって、鬱屈が溜まる怖さを感じた

それが、船上という小さな空間で(暗喩によって)全て表現できてるのが、とにかく凄い!
父も、母も
手伝う家族も
招かれた客も
なかなか輪に入れない恋人と娘も
クスクスも、音楽も、改装されたボロ船も
フランスという国家であったり
フランス人であったり
移民であったり
全てが何かの象徴であるんですね

その、現在抱える問題と危うさを提示しながら、即興のダンス(祖国の魂)と、思いもしない差し入れによって、「救い」という形で、この国自体の未来の可能性を示唆しているところに、映画の最大のメッセージを感じました

ラストの暗転のタイミングが絶妙!

時間がある時に、是非観てください♩