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ザ・ギニーピッグ マンホールの中の人魚の消費者のレビュー・感想・評価

3.6
・ジャンル
ゴア/ダークファンタジー

・あらすじ
画家の林は妻に去られてからというものの現実から逃避する様に絵に没頭する日々を送っていた
その傍ら、彼には通っている場所があった
それは幼少期の思い出が残る川を埋めて作られたマンホールの中である
失われた明るい過去の虚像に浸る様に暗闇で過ごす林
そして彼はそこで物音を耳にする
音のした方へと向かうとそこには幼い頃に川で出会った人魚が当時の姿のままそこにいた
人魚はテレパシーで語りかけ、林もそれに応えていく
彼女は川に蓋をされてしまって以来、そこに留まり続けていたのだという
だが林が人魚の事も絵に描き残そうと人魚は苦痛に悶え始める
彼女の体には長い間、廃液に浸されていたせいで腹に大きな出来物があったのだ
それを見た林は自宅へと連れ帰り治療と共に彼女の絵を描き進めていくが症状は悪化の一途を辿り、やがて出来物は全身へと広がっていく
すると人魚は林に「七色の廃液によって出来た七色の膿を絵の具にして」と頼み込む
林は言われた通り、出来物を切っては膿を取り出して絵を描き進めていくが同時に症状も更に進行していき…

・感想
1・2作目と同様にホラー漫画家、日野日出志が監督を務めており、原作である同名作品もまた彼が手掛けた物である本作
その甲斐あって2作続けてWAHAHA本舗ががっつり絡んだ3と4の様にコミカルさに走る事なく元来の不気味な世界観を取り戻しており、同時にドラマ作品らしいちゃんとしたストーリーのある物となっているので最も見やすく最も魅力的な作品に仕上がっていたと思う

孤独の末に心を病み過去の美しい思い出に囚われた林が人魚に人生の全てを捧げ更に心が弱っていく姿も芝居がかった演技が少し気になりつつも耽美とグロを狂気で絡み合わせたストーリーを引き立てていた

映像世界も絵を描くには暗過ぎる一室で繰り広げられつつも出来物に呑まれていく人魚の姿や出来物を食い荒らす大量のヒル、膿と混ざって粘液化した血、症状の進行と共に崩れ落ちていく人魚の体などしっかり気持ち悪くて素晴らしい
ただだからこそ絵の具として使われる“七色の膿”の色彩が普通のペンキや油絵の具みたいな何の変哲もない原色になっていた点だけは残念

ストーリーに関しては大筋は良いしラストでは警察が介入するなど過去作品とは違ってやや現実的な描かれ方をしていたのも林を狂わせっぱなしで終わらせていなくて良い暗さ(通報の主である1階の住人を演じたのが久本だったのでせっかくのシリアスさが若干邪魔されてはいたけど…w)

次作も「ザ・ギニーピッグ」の名を冠した作品なので今作と同じ様に真剣に気持ち悪い世界観だと良いなぁ、と期待
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