ユウ

ウォーム・ボディーズのユウのレビュー・感想・評価

ウォーム・ボディーズ(2013年製作の映画)
4.3
ゾンビ版ロミオとジュリエットとして世に送り出された異色作。
若干コミカルな演出と元ネタに比べるとヒロインの性格のおかげもありかなり明るい雰囲気が特徴。

主人公のRは気づいた時にはゾンビになっており、記憶はあやふやで名前も思い出せずにいた。

この作品のゾンビは概ね従来型のゾンビと変わらない。
人間を好食し、犠牲者は時にゾンビとして復活する。動きは遅めだが、ごく短時間であれば俊敏に活動することもある。

だが、特筆すべき点として、他者の脳を食うことでその人物の生前を追体験できること、稀にゾンビ同士でも捕食し合うこと、ゾンビ同士の捕食や自身の肉を食べ始めたゾンビはスカルというより強力なクリーチャーになることなどがある。
多くのゾンビは生前の習慣などを繰り返して過ごしては、腹が減るとスーパーマーケットなどへ向かい狩りを行う。

Rはいつものように狩りに出かけ、R曰く「いい時計」を身につけている青年を捕食する。
そして、更なる獲物を狩ろうとするが、どうも一人の女性ジュリーが気になってしまう。彼女と生前ともに過ごした記憶が蘇ってきたのだ。
彼女にゾンビのフリをさせることで匿い、寝ぐらにしているジャンボジェットへ連れ帰る。
Rは、彼女へ(生者用の)食糧を与え、レコードをかけてどうにかもてなし、二人はゾンビと生者でありながら打ち解ける。
そして彼女から、恋人がゾンビに襲われ亡くなったことを聞かされる。
そして、その恋人は、件のいい時計をした青年であった。
ジュリーとの記憶は蘇ったものではなく、彼女の恋人を捕食したことで奪った追体験だった。(鑑賞者にはそのことがはじめからわかるよう演出されている)

もしかしたら恋人もゾンビになってるのかもと口にするジュリーだが、Rのポケットには狩りの際に剥ぎ取った彼の脳があった。

Rは苦悩するものの、ジュリーに惹かれる気持ちは自分のものだと思い直し、彼女を生者たちの元へ逃す決心をする……

全体的にロミオとジュリエットのオマージュが散りばめられている。
「おお、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?」という、立場の違いを嘆いた象徴的なやりとりの代わりには「なんでRだけなの?」と若干淡白なセリフが当てられており、少し笑ってしまった。
だが、元ネタ通り立場の違いを扱ったシーンであり、ゾンビ化とそれによる記憶喪失という背景にフォーカスされている。

また愛のために命を捨て悲運に終わるのが元ネタだが、既に死んでいるのに愛のために命を捨てようとし……

この先は実際に観てみてほしい。
超変化球なラブストーリーだが、その分見応えがある。
ユウ

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