F.W.ムルナウがロバート・フラハティの協力のもと撮影した傑作『タブウ』と同名のタイトルをあえて掲げ、物語舞台を原典の南太平洋からアフリカ南部モザンビークに変えるという挑発的な姿勢は評価できる。さらに、そうした映画史的に気障な姿勢を本編で見せることなく、禁欲的でありながら、ところどころに艶めかしさを感じさせるショットの切れ味も悪くない。だが、ショット間の緊密な連携が感じられず、運動に乏しい映像は眠気を誘う。視覚よりもモノローグに頼った構成も、映画を寓話的な出来に収めている。いろいろな意味で惜しい。