Vega

熱波のVegaのレビュー・感想・評価

熱波(2012年製作の映画)
4.8
第1部「楽園の喪失」では、リスボンに住む老女アウロラの最期までの数日間を敬虔なカトリック教徒である隣人ピラールの視点で描き、そして第2部「楽園」では、50年前のポルトガル植民地下のアフリカを舞台に、アウロラが不倫の末にその地を去るまでの数ヶ月を不倫相手であるジャン・ルカの語りで綴る。

老女アウロラの妄言に登場する猿や鰐は消し去ったはずの楽園の記憶の断片であること、また娘との距離の遠さの理由も2部によって見えてくる。
1部では決して前景には出ないが、ムーア人やローマ人が身を潜めたとされる洞窟や反ジェノサイドのデモなど、異民族間の抗争の歴史の爪痕を感じる。
2部は植民地戦争勃発の頃のアフリカ。反乱や虐殺は全く描かれることはなく、ふたりの逢瀬を息をのむ美しさで見せてくれる。浮かぶ雲を動物に例えたり、草原を横移動していくシーン!素敵。環境音のみのモノローグも物語性を高めていてよかった。

激動の暗い歴史に生きた女性のものがたりをこのような構成で見せるってのも面白いし、何につけ映像きれい!音楽もいい!絶望的な別れに祝祭的な民族音楽が流れる悲しさ。

ポルトガル、パライソ、きっと宗教的意味合いも深いのだろうな。

ミゲル・ゴメスすごい。アラビアンナイト見逃したの痛恨!
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