新宿御苑の美しさが際立つ作品。雨が静かに水面に落ちる一瞬一瞬と新緑の木々が丁寧に描写されており、心が落ち着く映像が続く。2人の主人公の関係よりも内面の変化に魅了される。特に雨が降らない日々の中で新しく買い物をして足元を彩りながら本を読めるようになっていく姿と、ビールとチョコレートばかりを口にする状態にリバウンドする精神的な波の描き方がうまく、目が離せなくなる。
私も昔、雨の日が好きな友達がいた。本作の主人公を見ながら雨が好きな人は心が静かでどこか安心感を感じる落ち着きのある人が多いかもしれない、と昔の友達を思った。
主人公のわかりやすい恋心と高校での教師のいじめのエピソードが少し短絡的な点を除いて、余白を連想させる好みの作品だった。ショートストーリーに近い長さなのでもう一度観たい。