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言の葉の庭のKHのレビュー・感想・評価

言の葉の庭(2013年製作の映画)
2.5
正直何度観てもふざけた話だなと思ってしまう。ナレーションの語りがクドいし、全ての演出が枠にハマっていて典型的。映画の内容自体もどこまで行ってもリアリティがなく、観ていて思春期の夢の中に閉じ込められた様な感覚になる。この世界(信頼できない大人達の作る社会)と主人公という対立が目に見えており、ある意味やはりセカイ系と言える。
早く大人になりたいと思いつつも、大人に対し不信感を抱く主人公の秋月。学校には遅刻をしサボり気味のくせに、しっかり学校には陽気な友達がいる。いかにも物語の主人公で、監督の思い描く理想像の妄想に付き合わされている感じ。
同じく雪野は映画の中では一見すると優しくて健気な人だけど、描かれてないだけで本当はずっと計算高く艷容で魔性な一面もある女性だと思う。従ってこの映画は大人を信用しない未熟な男の子が魔女に誘惑される構造になっている。
そしてこの映画は所々に「エロ」が隠されている。しかしそれを直接的に描かずに、映像を通して間接的に表現されることで昇華している所が意地悪だと思う。最も象徴的なのが秋月が雪野の足を測るシーンで、秋月は初めて女性の足に手を触れる。このシーンは明らかに「性」に対する衝動の隠喩になっている。また雨に濡れて次のカットで、雪野のマンションで雪野が秋月のワイシャツをアイロンしている場面に移り変わる所もその1つだと思う。
散々言ったが、この映画の凄いところは思春期のむしゃくしゃとした気持ちをベタな演出でも本気で描こうとしているところだと思う。そして本気で東京の街を美しく描こうとしているところだと思う。だから一方で醒めた気持ちで観ながらも、その本気度には何度観ても驚いてしまう。
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