文子さんキレイ〜〜まだ3本しかみてないけどだんだん色気と凄みが増してくる！
『卍』と同じく谷崎潤一郎原作、増村保造監督、若尾文子主演。谷崎の『刺青』は、刺青師・清吉が理想の女の背中に女郎蜘蛛を掘っていく恍惚感の描写がすばらしい傑作だが、本作はその短編を大幅に発展させ創作されたもの。妖しげな谷崎ワールドというよりは大衆的な時代劇になっており、チャンバラが始まるとどうしても安っぽく見えてしまうのが惜しい。とはいえ若尾文子の成熟した、きっぷのいい男前な魅力がほとばしり見応えがあった。卍と同様、裸体の背中は替え玉ですね、顔のショットとの繋がりがひとつもないので。
清吉の前を、着崩した着物姿の女(文子さん)が気怠そうに横切り、彼がその素足に魅入るシーンがある。彫りものの土台として理想の肌だと見初める場面。本作は清吉ではなく女が主役だからこの演出も悪くはないけど、それなら素足よりもうなじとかを見つめる方が自然。
あくまで素足にこだわるのなら、ここで女の全身を出さないほうが良かったと思う。原作では清吉が、籠から覗く彼女の美しい素足だけを見て、そこから全身の肌を想像し惚れこむのだ。映画ではその想像力を奪い、官能性を奪ってしまっている。
