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永遠の0の3104Arataのレビュー・感想・評価

永遠の0(2013年製作の映画)
3.7
<22年03月>
【観るタイミングで異なる印象を頂いてしまう深イィ映画】
・2013年公開の日本の戦争ドラマxミステリー映画。
・司法試験に落ち続けて漠然と迷いながら生きていた佐伯健太郎が、ある日、自身の祖母が他界したことをきっかけに、血縁上の実の祖父が別にいることを知り、彼を知る人たちを訪ねて調べ始める。太平洋戦争でゼロ戦パイロットとして戦っていた実の祖父に対して「いつも逃げ回る臆病者」と嫌気をぶつける人もいれば「一番強い人」と尊敬する人もいる。追っていく中で、実の祖父は「家族を守るために自分は絶対に死なない」という信念をもって生きていたことがわかってくる。一方で、終戦直前には特攻隊として出撃して死んでしまった祖父。見えてくる祖父に対する様々な矛盾した情報から祖父が死んでしまうまでの真意を探っていく…  という大枠ストーリー。

[お薦めのポイント]
・観るタイミングって大切…と実感。若かりし頃に観た時とは違う見え方で感動しました。
・ヒューマンドラマとミステリーとアクションがうまく融合されていました。
・「今、生きていることの幸せ」を素直に感じ、「丁寧に生きよう」と自戒が生まれました。
・答えの見えない「永遠の0」というタイトルに思考を巡らせる楽しさ。

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・観るタイミングって大切…と実感。若かりし頃に観た時とは違う見え方で感動しました。
 ∟若かりし頃に観た感想メモを見ると、「丁寧に生きなきゃ、とは思ったものの、感情を揺さぶられるほどの共感はあまりなかった。映画館で観なくてもよかったかも。なんというか、言いたいことは理解ができても、共感ができないイメージ。これは演出の問題なのか、物語の問題なのか、それすらイマイチわからない。現代と過去(太平洋戦争の時代)を行ったり来たりすることで、戦争時代の宮部さんに没頭できなかったことが原因かもしれない。」といった趣旨で記載がされていました。
 ∟今回改めて作品を観て、大筋、過去の自分に合意。笑 ただ、共感度合いは全然異なるなぁと感じました。守るもの(奥さんや子供など)がいる状態とそうでない状態による感じ方の違いかもしれません。もしかしたら、長く生きた分、感情経験が積み上げられたからなのかもしれません。いずれにしても、観るタイミングで異なる見え方のする、ある意味奥深い映画なのだと思いました。
 ∟現代と過去の行ったり来たり(対話形式)は、今でも「冷めてしまう要因」として響いてきました。しかし、宮部さんの真意や各種伏線を伏せつつ、物語をだらけさせない(過去の状況をかいつまんでテンポよく見せる)、ためには、観客が「冷静になる瞬間」を持たせてでも取り入れるべく明確な意図を持った現代と過去の対話形式、なのかもしれませんね。こればっかりは作り手でないのでわかりません笑 少なくともここに関して、過去に抱いたほどの違和感は感じずに最後まで楽しんで観ることができました。

・ヒューマンドラマとミステリーとアクションがうまく融合されていました。
 ∟青年 健太郎の目線で見る実の祖父宮部さんの素晴らしい信念や行動、家族を思う気持ち、それを取り囲む部下たち、特攻隊員となり散るまでの苦悩。その妻(健太郎の祖母)が宮部さん亡き後も必死に生きる姿。それらにしっかりと感動させていただきました。

 ∟そして、宮部さん(実の祖父)が「特攻隊員になり最後を迎える」までに張り巡らされた数々の伏線と、彼自身の真意、これがミステリー要素。音楽もそれっぽく、わかりやすい演出がされています。 ∟加えて。これだけドラマチックな内容ならアクションシーンは手を抜いてもよかろう…などと思っていましたが、かなり見応えのあるリアルな戦闘シーン。
 ∟これだけの見応えがあるのですから映画館で観たい作品です。かつて「映画館で観なくてもよかったかも」とつぶやいた過去の自分を恥じます笑

・「今、生きていることの幸せ」を素直に感じ、「丁寧に生きよう」と自戒が生まれました。
 ∟この映画を観て一番嬉しかったことは、素直に「生きていることがとても幸せ。だからもっと丁寧に生きよう」と思えた事です。ただ流れていく日常生活を目を見開くことなく、幸せをかみしめることなく雑に生きてしまってたなぁと自戒しました。。。
 ∟戦争映画を観れば大抵は「誰かの犠牲の上に私たちは生きている」と感じて「人生を大切にしよう」と思うのですが、この映画はより強くそう思わせてくれました。(もしかしたら、あまり良い印象を持てなかった「現代と過去の対話形式」は、終盤でそう思えわせるための仕掛け的に用意された素敵演出なのかもしません。)

・答えの見えない「永遠の0」というタイトルに思考を巡らせる楽しさ。
 ∟映画を観終わると、必ず皆さん「永遠の0って何?!」と考えると思います。そういう終わり方をしてくれます。そこで改めて考えるわけですが、それがなかなか面白い。過去の鑑賞時には、旅立ったゼロ戦で特攻隊として最後を迎えた宮部さんが帰ることのない状況、つまり永遠にゼロ戦にいる(=永遠のゼロ)、と思いました。しかし、以前とは見え方が若干変わった今回は、「物語をつなぐ」という意味も含まれている感じました。それは作中の以下のような台詞から、「国が続く」「物語をつなぐ」「幸せな国」「未来への希望」などのワードが想起されて、個人的な見解に至りました。
  「この国がずっと続いていってほしい」
  「そのとき日本はどんな国になっているんでしょうね」
  「生き残った者がしなければならないことは、その死を無駄にしないこと。物語を続けなければならない」
  「私たちだけが特別ではない。あの時代、そんなことが沢山あった」

 ∟宮部さんがゼロ戦に乗って自ら敵艦に突っ込むことを決心できたのは「永遠にこの国に幸せな未来が続きますようにという願い」を信じることができたから。そして実際に、健太郎という存在が、当時を生き残った方々の存在が、現在にある。そして、健太郎自身も祖父の物語を明らかにした結果、それをしっかりとつながなければ(≒人生を大切に生きなければ)という意思が芽生え始め、今までと変わらない日常なのに不思議と景色が変わる。そうやって、「ゼロ」戦で散った宮部さんの信念(物語)は「永遠」につながれていくであろう、という希望に満ちた結論に感じました。 ∟とはいえ、原作者さん製作者さんの真意はわかりません!笑 でもいいのかな、と。それを考察する行為そのものが楽しいですし、戦争反対!にもつながりますし、幸せに生きよう!という力にもなる。これが映画の持つ魅力そのものなのかもしれません。


・私自身も10年の時を超え、改めて鑑賞し、見えるものが異なる楽しさがありました。「面白いからもう一度観たい」ではありませんでしたが、過去の鑑賞で何か引っかかるものがあり、ふと、もう一度観ることになりました。これもまた、不思議な「つながり」なのかもしれませんね笑 改めて、映画は観る人によっても、その人の状況によっても見え方の変わる素敵な芸術だと体感させて頂けました。ありがとうございました。

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