ひろぽん

永遠の0のひろぽんのレビュー・感想・評価

永遠の0(2013年製作の映画)
4.3
司法試験に落ちて進路に迷う青年・佐伯健太郎はある日、祖母の死をキッカケに血縁上の祖父が別にいることを知る。実の祖父である宮部久蔵は、太平洋戦争で零戦パイロットとして戦い、終戦直前に特攻出撃により戦死していた。生きて帰ることにこだわり続けた祖父がなぜ特攻に志願し、命を落としたのかという謎を調べ始め、祖父を知る人々を訪ね歩いて理由を探っていく物語。


実の祖父・宮部を知る当時の人たちに戦時中の話を聞いていくうちに、徐々に祖父の熱い思いが明かされていくというお話。

司法浪人をしている健太郎が祖父の思いを知るにつれ、気の抜けたような表情から凛とした男の表情に顔つきが変化していく三浦春馬の表情の作り方が巧みで凄い。

そして、この作品の中心人物を担っている宮部久蔵の「臆病者」「小心者」「卑怯者」という序盤の最悪の印象が、家族や仲間思いという、愛と優しさに溢れる好印象な人物像へと変化していく展開の構成が上手い。

色々な人のフィルターを通すことによって全く違った印象になる展開が良く、144分という長尺を感じさせない。話し手が変わるにつれ、もっと宮部久蔵という人物を知りたいという欲と共に健太郎と同じ目線で進んでいくので、ドンドン物語に引き込まれていく。

話を聞けば聞くほど特攻を志願した理由の謎が深まり、目が離せない。

戦時中はお国のために死にゆくというのが当たり前という洗脳的な考えの中、それに抗い必死に生きることにだけに執着し、信念を貫く宮部の闘志は男としてカッコよかった。だからこそ、松乃や清子の家族のために最後まで生きて欲しかった。

景浦が清子をヤクザから救ったという伏線のエピソードも良い。

ラストの宮部の笑みはパイロットとして天才的な技術がありながらも戦闘から逃げていた男が、本気を出したという本能的なものなのかな?

戦争では王道のストーリーだが、後世にも戦争を語り継ぐという大切なテーマが含まれている。戦争を知らない世代が増える中で忘れてはいけない大切な作品なんだと思う。使われている音楽はとても良く、映像も迫力がありとても好きな作品。岡田准一や三浦春馬を始め、新井浩文、染谷将太、濱田岳など実力派俳優たちの演技が光る。
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