こーた

永遠の0のこーたのレビュー・感想・評価

永遠の0(2013年製作の映画)
4.0
物語は現代を生きる孫たちからはじまる。祖父がどんな人だったのか?そんな素朴な疑問からはじまった探究が、神風特攻隊員の壮絶な運命を知るきっかけになる。
孫たちは当時を知る零戦パイロットの生き残りへ取材しにいく。宮部久蔵は臆病者だった。と口を揃え孫は落胆するが、彼に親しい人間たちは異を唱える。そこから過去の語りがはじまる。「愛する人の元へ帰る」そんな強くシンプルで当然の想いは、国家存亡の危機において個の利益を追求する言動に捉えられ、非難の対象となっていた。なんなら軍規違反で処罰されるかもしれない。戦争を体験していない現代の若者にとって、国家のために率先して死ぬことは理解できないかもしれない。孫もその葛藤を体感する。宗教的強烈なナショナリズムであることは現代人からしたらそうなのであろうが、それを安易に言う資格は誰にもないであろう。
話は宮部の死後を巡り、再び現代に戻る。宮部に代わって生き残った大石と宮部の妻松乃、残されたものたちのその後が描かれる。松乃は施しを受けることに抵抗するが、大石の想いが上回る。ラストは壮絶な最期を遂げたであろう宮部の戦闘シーンで幕を閉じる。
現代・過去・現代を行き来しながら、それぞれの時代の人間たちの葛藤がよく描かれている。何より考えさせられることが多い。決して特攻隊員たちは喜んで死んだ訳ではない。そう思うしかやりきれなかったのかもしれない。少なくとも今を生きる我々は、そのことを非難せずに、忘れないことが大事なのかもしれない。
こーた

こーた