子持ちのカイロレン

リアル 完全なる首長竜の日の子持ちのカイロレンのレビュー・感想・評価

4.5
 Filmarksの平均点低い…黒沢清の中でも最低点。(「キャッツ」や「ハワード・ザ・ダック」より下)。たしかに必然性の分からないフィロソカルゾンビ、チープな首長竜などずっこけるのも分かるけど、今観るのと公開時(2013年)に観るのとでは大分受け取る印象が違ったということは言っときたい。
 佐藤健と綾瀬はるかが抱える罪悪感や、島の再開発の跡地は明らかに3.11以降を踏まえた表現だったし、極め付けは松重豊の『許せるわけないだろう』という台詞。これまで社会情勢とはわりと無関係に映画探求を続けてきた黒沢清がはっきりと社会問題に踏み込んだことに長年のファンとして熱くなるものがあった。首長竜は原発の象徴なんじゃないか、とか。その辺は2013年当時は時代とリンクした切実な表現だったように思う。なので自分にとってはラブストーリーよりそっちがこの映画の本筋という印象。ご本人は否定しそうだけど、あまり偏った見方だとも思わないんだよなぁ。組織の描き方とか見てる限り、黒沢清も70年代映画で育った反骨の人だと思ってるので。