櫻イミト

世紀の光の櫻イミトのレビュー・感想・評価

世紀の光(2006年製作の映画)
4.0
「ブンミおじさんの森」(2010)でカンヌ映画祭パルムドールを受賞したアピチャッポン監督の長編第五作。自らと両親の半生が投影された作品。主演をはじめ出演者の多くが素人。前半と後半の二部構成。

前半は緑の多い地方の病院、後半は近代的な都市の病院で、医師同士のほのかな恋の会話や医師と患者の会話が一部反復される。。。

全編に渡って様々な会話シーンが積み重ねられ、間に暗喩的な風景のインサートが入る。そこはかとないユーモアが感じられ映像も面白いので、退屈することは無く、むしろ「このカットは何を意味しているのだろう?」と引き込まれる。しかし映画全体で何を描こうとしているかの解釈は難しい。感じて楽しむ作品として作られているようにも思える。カメラ目線の女性からのドリーアウト、霧を吸い込む排気口へのズームインが強く印象に残る。監督の前作「トロピカル・マラディ」(2004)に引き続き広場での集団エクササイズシーンがある。                    

監督インタビューによると、実家は田舎の医院(両親は医師)で、前半は似ているロケ地を探して撮影。映画の前半は彼の母親、後半は彼の父親の記憶を反映しているとの事。
「これは愛についての映画。僕の故郷やバンコク近くの街で撮影し、時間とともに成長する場所や建築を見て、場所の変化にも焦点をあてました。『世紀の光』は僕の好きな事についての映画です」

※主人公の女性医師を演じるのは高速道路の料金所で働く全くの素人。男性医師役も本業はグラフィックデザイナー。
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