アピチャッポン作品の中でもコレが一番好き。最後の排気口のアップのところで毎回やられたー!って思う。今の若手(でいいのかな)映画監督では一番好き。
いちおうフィクションなんだけどストーリーはあるようでほとんどなく、実際にタイに存在する風景や日常のやりとりが淡々と紡がれるだけ。説明できませんが独特の手法でイメージをつないで、ある感情を見ている人に起こさせます。このつなぎ方やセレクトの感覚は天才的です。
この映画の中に絹の糸を紡ぐように「喜」と「怒」と「哀」と「楽」、その4つの間や、そこからはみ出してしまったような言葉にならない気持ちが丁寧に織り込まれていて、ずしっと胸に迫ります。どの部分を切り取ってどの角度から何を感じるかはその人次第。
そして、この監督のすごいところは、淡々とした映像の間に、失敗したら台無しになるくらいのびっくりするほどPOPな音楽を入れるんです。(小西康陽とかFPMみたいな) 強烈。 コレがまたこの監督の天才と言いたくなる所以かも。
ラストの、ダクトが延々と煙を吸い込むシーンから公園で50人くらいがエアロビには、やられた~!としばらくにやにやしてしまった。私が過去見た映画の中で、これ以上のインパクトあるエンディングを見たことがない。音楽が耳について一日ハナウタうたいまくり。
音楽の流れるシーンはどれも色彩が鮮やかに感じる。歯科医のライブのあとに流れるギターの甘い音を聴いていると、自分がそこにいるかのように夏の夜のじめっとした感じと時折涼しい風が吹いてるような空気まで感じた。
小ネタとして「男を判断するには机と寝室を見ればいいのよ」というセリフになるほどな~と思った。
もし機会があれば口をぽかーんと開けて、飛び込んでくる映像や音楽に全身すっぽりと身を委ねて、自分の中の感情に耳を澄ませてみて欲しいと思います。私ももう一度(いや、何度でも)温かいような楽しいような切ないような… あの気持ちを感じてみたいなぁと思ってます。
余談
あまりに好きすぎて、タイで見かけた時、全速力で追いかけてってサインください!って日本語で言ったw。監督優しくてちゃんとサインして写真も撮ってくれた。最高の思い出。