砂

世紀の光の砂のレビュー・感想・評価

世紀の光(2006年製作の映画)
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福岡アジアフォーカス2020にて鑑賞。アピチャッポン監督の作品はだいぶ前に「ブンミおじさんの森」をDVDで観て眠気を催し内容を覚えておらず…という記憶があったけど、それは当時の年齢もあってのこと…

本作はわりとわかりやすい二項対立を用いてまるで輪廻のような二部が場所をかえて再現されるのだが、物事のあり方が変わることで「物語られない」話となって、映画の進行も変化していく。わかりやすい様々なモチーフを対にしているのだけど細かくは割愛する。

いくつか印象深かったことを書き出すと、まず長回しの印象が前半後半で全然違う。緑がそよぐ光景は眠くなるくらいスローで牧歌的な気分になるのに、白いコンクリートの中にあってはそれが不安感を呼び起こす。ついで音。こちらも前述の印象を強化することに役立っており、「無機質な音」それ自体が自然には存在しないものであることをしみじみと思わせる。

まだ監督の声が表出しているというか、「上手い」手法だからその点は良くも悪くも予想してたより捉えやすい内容だった。アピチャッポン監督の作品はほとんどレンタルやサブスクになく、ソフト買うくらいしか観る方法がない中で音響の占める意味が大きい本作を映画館で観ることができたのは幸いだった。
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